- 文藝春秋 刊
- 15.2 x 10.6cm、445ページ
- 2014年8月
- ISBN 978-4167901769
題名が示す通り、本書は天文書ではない。しかし観測天文学では、錯視の問題を避けて通ることはできない。例えば筆者は変光星ぎょしゃ座εを観測する時に、ペルセウス座全体の新星出現パトロールも同時に行っているが、「どうせ今晩も新星はないだろう」とは思わずに「ある」と信じて観測するようにしている。
ペルセウス座のカーブ(山田卓先生は「秋の大曲線」と命名した)とアルゴル近くの四辺形付近を口径5cm双眼鏡で眺め、観測が終わったら「ペル付近にノヴァなし」とメモする。この新星探しは6年、年間平均10晩のアルゴル極小との同時パトロールも含めればもう50年以上続いているが、1度も発見したことはない。
本書を書店の店頭で見かけたときに期待した月の錯視についての記事は残念ながらよく見ると載っていなかった。だがスマホを見ながらの車(自転車・バイクを含む)の運転の危険性、えひめ丸沈没事件、クリントン女史の偽証事件、リーマンショック引き金事件など、さまざまな社会事象に絡めた内容が興味深い。