- 岩崎書店
- A5判、112ページ
- ISBN 978-4-265-04671-3
- 価格 1,365円
評者がこれまで生きてきた60数年間で一度も、実物はおろか、写真や絵でも拝見したことが無かった物に本書で初めて対面した。もちろん、世界天文年の今年いやというほど見た、ガリレオの望遠鏡のことではない。ガリレオの顕微鏡である。本書70ページにその流麗な姿が(残念ながらモノクロ画像だが)掲載されている。それを上から覗きこみ、ハエやバッタ、果てはノミまでシミジミと眺め入るヒゲモジャの主人公を想像するのは実に楽しい。これだけで評者は買って得したと思った。
著者のノヴェッリ氏はガリレオの同国人、すなわちイタリアの子供向け科学書ライター兼イラストレーター。世界20か国以上で翻訳書が刊行されているという同氏のシリーズ「天才!?科学者シリーズ」第一回配本である。以下、ダーウィン、アインシュタイン、アルキメデスと続くそうだが、エジソン、ニュートンばかりでなくアルキメデス、ヒポクラテスなど古代から近代まで有名どころが名を連ねるシリーズだ。シリーズ名に「!?」がつくところがミソで、偉人のあらゆることがわかるという。
本書に限ってみれば、子ども向けだからか「口げんか屋」の異名こそ書かれていないが、占星術を拒否し、音楽を愛し(リュートの名演奏家だった)、信仰はあつく、原子論者だった天才ガリレオの素顔を余すところなく、しかも子供向きに紹介してくれているのだ。本書を買わずしてガリレオを語るなかれ。
ガリレオが発明した装置も紹介されている。木星衛星予報装置(ジオビラビオ)・航海者用星位観測装置(大兜)・軍事用コンパス(砲弾軌道計算機:これも詳細な図版は本書で初めて拝見した)などなど。ガリレオにとっては、自然がこの上ない聖書だっただろうが、子どもにガリレオを紹介しようとする評者にとっては、本書がこの上ない聖書になった。