- 河出書房新社
- A6判、408ページ
- ISBN 978-4-309-46316-2
- 価格 998円
本書は、本書評ですでにご紹介した同著者の「古代文明と気候大変動」の続刊で、中世以降の気候大変動を取り扱っているものだ。前書同様内容が詳細であるだけに、読み通すのはすごく大変だが、科学的に読み応えのある本である。少なくとも人類の歴史を気候大変動という観点から解明するためには、変動の詳細なデータ解析によらねばならない。
日本の平安時代は世界的にも平安だった。すなわち8世紀から13世紀初めまでは、世界的に戦争が少なく、また気候が温暖だった。だが、13世紀を過ぎて、西欧科学文明が目覚め、それとともに近代的技術文化が花開くに至ったころ、戦争は増え、人々の宗教心や生活観が冷えていったのは、太陽活動の衰えと共に生じた気候の悪化が原因だったことは、本書を読めば歴然の事実となる。直接的にはNAOと呼ばれる北大西洋振動がヨーロッパ諸国の気候を左右しているのだが、それによってテームズ川が凍結し、イギリスでワインの生産が放棄されたり、あるいはバイキングがグリーンランドを緑地化・農耕可能としたことなど、また宗教改革やフランス革命も、実に簡単に説明可能だと主張する著者の意見に、評者は天文普及家として賛成する。人は占星術的にではなく、科学的に太陽活動に明らかな影響を受けており、運命は気候変動によって大きく左右されてきたのである。
有名な無黒点期についての言及も4ページほどではあるが、オーロラとの関連も含め、詳細に語ってくれている。意見の違いはあれ、最後の第4部で地球温暖化についてもその経緯の歴史をたどることができる。
天文学・気象学に興味を持っておられる皆さんをはじめ、人文系の歴史学者やアマチュア歴史家、経済関係者に、人類文化がいかに気候に左右されてきたかを、ぜひ本書を通じて知っていただきたいものだ。面白いですよ!