- 河出書房新社
- A6判、224ページ
- ISBN4-309-49603-2
- 価格 540円
3年程前、ある科学館HPに天体のスピードについての文を寄稿したところ、天文学とは無関係の“スピード”検索者からのアクセスが相次いでいた。それをもってしても、星の話を切り口にする時、枕詞用に雑学の有用性が証明できると評者は信じている。本書には地球の自転公転、太陽系諸天体から恒星固有運動、銀河回転から超新星爆発速度まで1章が設けられているが、若干刺身のツマ程度。それよりも森羅万象ありとあらゆる事柄、消化・ボケ・脳死までの時間、爪・陰毛の伸び、くしゃみ・まばたき・血液・神経伝達・精子の速度、あるいは、ゴキブリやなまけもの・恐竜の移動、フグ毒・ビーバーが木を倒す速度、気象現象から土石流・火砕流・砂漠化の速度、ファッションモデルの着替え・走れメロス・ハイジがこぐブランコ、力道山の空手チョップ、およそ多種の機械装置類の速さまで、真実を知るのが恐ろしいほど。答えは書かれていないが、ナゼ?と考えつつ読み進むのがおすすめだ。ただ数箇所に、例えば地球の高速自転で振り落とされない理由に重力が正解(正しくは慣性)とあるなど、孫引き編集本にありがちな誤りが見られるので、注意が必要だ。