- 河出書房新社
- 菊判、127ページ
- ISBN4-309-76089-9
- 価格 1,890円
新たに収集された貴重な写真や資料がふんだんに載った「本で見るアインシュタイン展」。特に1922年訪日時の記事は非常に豊富で重要なもの。訪問旅行に同行して各地での振舞いを描いた漫画家岡本一平の多数の作品も、画家の目を通した人物像を余すところなく描き出し、興味が尽きない。評者が読んだ中で、これほどアインシュタインの人間像がわかりやすく書かれたものはない。天才科学者の人間性や優しさが手にとるように理解できる。随所に散りばめられたその言葉もまた深い感銘を与える。特に評者には「他人のために生きた人生だけが価値を持つ」という言葉が忘れられない。その人生を襲った数々の試練(親の倒産・受験失敗・指導教授との確執…)に、普通ならひねくれ者になるのを天来のプラス思考が救ったとの説明は感動もの。相対論の証拠になった皆既日食時の恒星位置計測や光速度不変などに関する科学的説明も、わかりやすく記されている。訪日日程表や年譜も詳細で、さらに平和運動での博士の役割にも詳しく触れられ、どなたにもおすすめできるものだ。