- 紀伊國屋書店
- A5判、293ページ
- ISBN4-87698-807-2
- 価格 2,940円
永年研究を続けられたテーマを著者がまとめ上げた渾身の力作。真に読み応えがある書。ために評者も完読時間がいつもの数倍必要だった。その結果、評者長年の疑問が氷解し新知識が多数獲得できた。例えば、古代インドのバラモン教を否定した釈迦は何と「輪廻」を語らず、後代小乗仏教を打ち立てた説一切有部(せついっさいうぶ)というグループがバラモン教から転用したものだという。「星の輪廻」が仏教概念と似ていると迂闊に解説していた評者は恥ずかしい。また、農耕民族が大地母神から輪廻観に導かれ、多神教(仏教を含む)を信奉しがちなのに対し、主として遊牧民族が信じる一神教は、天文・気象現象に支配される厳しい宗教であり、故に科学的宇宙観が醸成されがちなことも自然に理解される。本書は多数の論証を下地に、科学思想史専攻の著者の見識と洞察力を存分に発揮したユニークで大人向けの書物。東洋と西洋の宇宙論の出会いに関する記述も大変面白い。