- ニュートンプレス
- A4判、142ページ
- ISBN 978-4-315-51858-0
- 価格 2,499円
月の科学を正面から取り上げた和書は、意外に少ない。日本で入手が可能な洋書を含めてもやはり少ない。近刊書では、すでに本書評でご紹介させて頂いた渡部潤一先生の本くらいである。
その意味では、雑誌Newtonは重要な存在だ。科学雑誌としての説明もさることながら、単なる説明図にとどまらないイラストが素晴らしいからである。評者はクレーター火口説も唱えられていた時代に育った(かな?)が、当時の本はほとんど文字だらけだった。大胆なイラストを多用した解説には、極めて説得力がある。
第一章「月の基本」は、よい意味で基本を通り越して、むしろ最先端である。ジャーナルの面目躍如で、ジャイアント・インパクトと月の誕生、表裏の相違、海やクレーターの形成、月南極に多い永久影と氷の存在、潮汐摩擦による地球自転減速と月の遠ざかりなどはイラストを見れば一目瞭然。第二章「月の不思議」が本書中最も教科書的。月が振舞う諸現象を徹底的に分かりやすく説明してくれる。だが、それでもジャーナルとしての指名は全うしており、月の土地売買の無効なことなどはどなたにも読んで(見て)頂きたい。
圧巻は第三章「日本の月探査機かぐやの成果」と第四章「人類はふたたび月をめざす」だ。どの説明も正確で徹底してわかりやすいが、なによりもイラストである。今やインターネット検索の時代で、最初にこのようなムックで特定の関心を持った方が、ネットでより詳細な説明を検索し、続いて特定の(大学の授業でも使えるような)専門書(洋書を含む)を調べるというのが、筋道になるのかもしれない。
本書を拝見しながら、評者は時代の変化を感じてしまった。こんな本が、テーブルの上に自然と置かれている家っていいだろうなぁ!そうそう、特別付録の「かぐやが見た月の素顔:最新月面図ポスター」は評者の書斎コーナー壁面に貼った。お陰で壁が無くなってしまった!