- 光文社 刊
- 11×17cm、241ページ
- 2015年2月
- ISBN 978-4-334-03841-0
筆者は、宇宙論解説書の書評を書くのが余り好きではない。だって、1960年代後半にホイーラー・ドウィット方程式が見つかり、それこそが宇宙創成後の様子を最も的確に表すかもと期待されたが、本書によれば半世紀近く経つ現在でも複雑すぎて一般解が見つかっていないと言うからだ。
筆者のような観測家の端くれには、その夜データとして端的に結論が出て、単純な頭ですぐ判らないとイライラするのだ。無から有が誕生して宇宙が生まれたということは科学的に理解できても、本書でたっぷりと説明されているように、無からの宇宙創成論には、現在厚いモヤがかかり、立ちはだかっているのだ。
1980年代終わりから1990年代始めにかけて世界中の学者によって研究されたが、ビッグバン後38万年間晴れ上がらず、電磁波観測による検証ができないために、本書によれば現在如何にアプローチして良いか判らないという現状だそうだ。ただ手が全く無いわけではなく、当面、重力波とニュートリノがポイントだという。
若いみなさん、本書を熟読して、希望に満ち溢れ今世紀中には見事解決をお願いしたい。好きではない宇宙論の書評を書くほどなのだから、本書が面白いことは良くお判り戴けるだろう。本書を読むと、現代物理学は全て宇宙論に集約されるのでは?と思えるほどだ。読了した2月28日の晩、垣間(かいま)見えたベテルギウスが妙に愛しかった。