- 新人物往来社 刊
- 19 x 13.2cm、255ページ
- 2009年12月
- 978-4404037879
- 価格 1,575円
評者は、雑誌「歴史読本」の有名な「万有こよみ百科」をはじめとする暦関連本のおっかけマニアである。岡田先生と親しくお話を交わしたことは確か一度もない(五島の解説員時代お目にかかった記憶はある)が、新刊書店・古書店問わず岡田先生の(本の)おっかけでもある。岡田先生の本が出版されたと知るや、購入を前提に大小各種書店の書棚(科学書コーナーだけでなく)を探し回る。何店か回るうちに必ず発見することができる。ということは、日本はもしかすると暦学大国なのかも知れない。
本書では先生は編纂者となっており、260ページ弱中約120ページが先生の著作、90ページあまりが矢野氏、50ページあまりが釣氏の著作である。いずれも暦学史のそうそうたる権威の方々でその解説には相当重みがあるが、いずれも決して素人には遠い所にある硬い文章ではない。
暦の歴史と種類から日本や世界における改暦の話、年号や暦全般の基礎知識(掲載エピソードの数々はチョー面白い)、旧暦時代の日本における「今日は何の日」まで、幅広く逸話や知識が収録された誠にわかりやすい暦百科事典だ。
評者が本書で一番勉強になったのは、明治維新における改暦の記事だ。旧来よく話題になった年俸制から月給制、極度に貧窮していた財政事情、明治6年に閏六月があったことの有名な話のみならず、太陽暦への改暦が近代国家への脱皮の第一条件だったという先生の指摘である。確かに今でもイスラム暦を報じる宗教国家群は存在するが、それらの国々でも国際的には太陽暦が公用とされている。今や改暦を緊急とする国家は存在しない。グレゴリオ暦が世界基準なのである。ある意味で、我が国はその先鞭を付けた近代国家なのだ。
暦についての知識は、今では天文学としては古くさい感じがするが、近代史を学ぶ歴史学者には、ぜひ身につけていただきたいことであると同時に、実用天文学の知識として、せめて旧暦から新暦への変換や太陽年、月齢の数え方、24節気、歳差年などを、常識として身につけていただきたい。その意味で、本書は重要な参考書になるはずだ。