- 誠文堂新光社
- 21×15cm、191ページ
- ISBN 978-4416719121
- 価格 1728円
評者より5年人生の先輩で、美術大学卒業後私設天文台の運営に関わり、天文普及に努めておられる筆者は、宇宙の楽しみ方に本当に精通なさっておられる。本書は、そんなベテランが著した月と寝食を共に暮らす方法を書いた、実に日本人らしい芸術書である。その解説も、美しい写真と共に要を得て名文である。
その良い例が56ページにある薄皮饅頭だ。月が地球に向いた側に見える(反対側=裏側には見えない)、ガリレオが海と呼んだ黒っぽい部分を、饅頭の餡子が透けて見えているのだという解説は、実に当を得ている。月内部の餡子が引かれて地球側に染み出てきたと言うわけ。反対側は、それに反して厚皮饅頭になっているわけだ。こういう所は、いわゆる真面目一方の天文学者じゃ堂々とはいえない発想である。芸術家ですね!
若い皆さんなら見られるだろうが(裏返せば評者も著者もチョー難しいので冷凍庫に入ろう)2063年5月31日21時過ぎに西の空で起こる月による金星食。これ、相当な天文現象ですよ(見たいなぁ)。カストル・ポルックス・金星がほぼ直線状に並び、金星だけが月に隠されるというもの。しかも月齢はタッタの3.3。すなわち暗縁潜入である。
「良き月夜、照っては照って、良き月夜」が回文だとか、反対から呼んでみよ、ともかく天文学者じゃない天文家が書いた本。オモシロイですよ。