- 世界文化社
- 25.8×18.5cm、96ページ
- ISBN 978-4418182404
- 価格 1404円
最近NHKなどの俳句番組で活躍なさっている、女流俳人夏井さんが出版された俳句の入門者シリーズ中の一書。厳しい目でなさる批評は、評者にも俳句の主旨が判りやすく、本書に紹介された数百にも上る「つき」を詠んだ俳句は、感心するものばかり。特に江戸時代の芭蕉や一茶、其角、蕪村などの名句や、子規、虚子などなど、やっぱり評者の原点である日本人っていいなぁと感じ入るのだ。
評者が最も好んでいるのは、与謝蕪村の「月天心貧しき町を通りけり」である。これは半世紀以上前の高校時代、もちろん国語の教科書で初めて出会ったとき、凄い! と思った句だ。まさに、この単純な句の中に日本の情景が見事に描かれている。それと共に、既にお亡くなりになった国語の恩師のことも思い出す。日本人にはやっぱり月ですよ。西洋人は魔女の横顔やライオン、磔(はりつけ)になった少年を見たりで、ロマンもヘッタクレもないですよね。黒ウサギもいいじゃないですか。
本書では、五感と心で愛でる月のサイエンスと銘打ち、国立天文台の片山真人先生が月科学の話題を易しくあるいは優しく解説してくださっている。また、俳句が持つ独特の季節感に関して、月に関する季語なども解説されている。いわば、日本人にピッタリの月の読本になっているのだ。おすすめします。