- 創元社
- B6判、142ページ
- ISBN4-422-21191-9
- 価格 1,575円
ギリシャに生まれ、アラビアを経て、近代ヨーロッパで大成した科学の中で、天文学ほどアラビアで熟成したものはない。星の名前一つをとってもよく分かることだ。だが、日本でそのことを調べようとすると、これまでは文字だらけの難しい研究書しかなく、それもほとんどプトレマイオスの「アルマゲスト」の図解説明程度で、ややもすると概略すらつかむことができなかった。この本は、出版文化が日本とおよそ違う美術芸術の国フランスで、中世科学史教授の著者が、美麗な図版を中心に詳細かつ万人向けに書かれた好著である。見ているだけで、広大深遠なアラビア科学の魅力に引き込まれる本だ。
近年、アラビア科学が従来の西欧側からの視点ではなく、イスラム側視点で再評価が始まりつつあるそうだ。例えばコンピュータ数値計算の原点は、原理志向の理論物理学ではなくアラビア数学にあるという。広範囲に科学を志向するみなさんに、広くおすすめしたい。