- 創元社
- 17.2cm×14.8cm、57ページ
- 2009年11月
- ISBN 978-4-422-21474-0
- 価格 1,260円
著者はウェールズ大学名誉研究員で、ストーンヘンジを初めて天文学的遺物として紹介したジェラルド・ホーキンズ博士の正統的後継者である。評者は30年近く前、今や古書でしか入手不可能となっているホーキンズやホイルの本で初めて、ストーンヘンジの天文学的意義を知った。以来、折に触れてその参考書を捜し求めてきたが、やっと目を見張るほどの好書にめぐりあえた。
わずか60頁に満たない小冊子なのだが、ページをめくるたびに感嘆詞が出るような新知識とモノクロ図版の山。その図版も古くは1569年に描かれた貴重なスケッチをはじめ、歴史的なもので溢れている。まさしく探求心をくすぐってくれるその素晴らしさに、家内(金井の家内はおっかない)に黙って貯金して英国まで飛んで行こうかと企んでしまうほどだ。もっとも、本書評と星ナビの記事の執筆があるし、ストーンヘンジの研究のために英会話学校に通う費用のあてもないので、実行は未定。
本書はとにかく情報が詳細なことが特徴といえる。ストーンヘンジの所在地ソールズベリー平原の地図も、現地に行って絶対迷わないほど。ただし、訪れる人が多すぎるため入場には管理者イングリッシュ・ヘリテッジ財団の事前許可が必要なのでご注意を。
だが、それ以上に本書を価値あるものとしているのは、天文学者によって書かれたということだ。歴史的な事柄だけでなく、夏至や冬至の太陽・月の出没方向と巨石の配置などが詳細に解明されていて、考古天文学の面白さを思う存分味わうことができるのである。
評者自宅近くにある環状列石なども、一見石の配置が特定の天体現象と結びつきそうにはないが、もう少し詳細に調査してみようか、そう思わされる本である。