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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

旧暦読本 現代に生きる「こよみ」の知恵

表紙写真

  • 岡田 芳朗 著
  • 創元社
  • A5判、200ページ
  • ISBN4-422-23021-2
  • 価格 2,100円

「暦の上では春ですが…」。異常気象が多く、季節感が薄れているという方も多いはず。そんな現代人にこそ、この本をおすすめしたい。「太陽暦・太陰暦」「中秋の名月」といった天文の話はもちろんのこと、「二十四節気」といった自然観察に基づく季節の概念や、「大安・仏滅」などの民間信仰についても深く掘り下げた「暦の辞書」とでも言うべき一冊だ。本書を読めば必ず一度は「そういうことだったのか」とうなづくと同時に、昔の人々が自然を、地上から星空にいたるまで、どれだけ細かく観察して大事にしていたか気づかされるに違いない。

暦、特に和暦に関する研究で右に出る人がいないといわれる岡田先生(女子美術大学名誉教授、暦の会会長)の、最新刊書。暦学は天文学を基礎に置かれるものだが、また歴史や民俗学の研究にも欠かすことができないもの。本書は、どちらかというとその応用分野からの需要に応えられる内容で、江戸時代日本各地で出版された地方暦の紹介、領暦と略歴の説明、世界各地の暦の紹介、暦と運勢、時刻制度と潮汐、雑節・五節句について、大変詳細に説明されている。

評者も、「暦ものがたり」「現代こよみ読み解き事典」「日本の暦」など、先生の著書にずいぶんとお世話になってきた。また、共著の「暦の百科事典」は、古書店で初版・改訂版とも購入させていただいた。プラネタリウムで解説する際、お客様からの二十四節気などに関する質問に対応するためだった。

本書はその中でもわかりやすさ・調べやすさの点で出色の本である。中でも、丹生暦や泉州暦など地方暦の歴史や頒布に関する記事は、よくわかったし、十二直と北斗七星との関連性や二十八宿と天文暦との関係はおもしろく、壇ノ浦と由比ヶ浜の戦いにおける史実と天文との関連は、考えさせられることが多かった。その判断は読者の皆さんにお任せしたい。

特に、プラネタリウム関係者など天文普及に当たる方々は、本書の内容でその説明に幅を持たせることができるはずだ。また、天文愛好者の皆さんも、この本を通して暦に親しまれることを評者からもお願いしたい。

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