- シュプリンガー・ジャパン
- A5判、330ページ
- ISBN4-431-70996-7
- 価格 3,990円
前書きで2人の息子に、長い間ママのお勉強につきあわせてごめんなさいと謝っておられるママが書いたすごい物理の本。一見と、できれば通読の価値がある書だ。訳者あとがきには、誕生1931年から1990年ごろまで一貫して正体不明を貫いたニュートリノに関する研究の紹介とあるが、訳者が注として書き込んだ2006年までの研究成果も、貴重な資料である。「ニュートリノ研究とは何も検出されないことから多くのことを学ぶ学問である」という著者の主張が、まるで「寿限無寿限無五劫のすり切れ・・」式の呪文(ただし子どもの名前)のように評者には感じられるが、現代物理学における大統一理論などの大問題を通観することができる本を、評者は他に知らない。素粒子理論の歴史についてはもちろんのこと、第6章「太陽を覗く」・第7章「宇宙を覗く」・第8章「ニュートリノ月面観測基地」の後半3章は、天文関係者は全員勉強すべきである。でないと、宇宙論を含め、現代天文学をほとんど語ることができないからである。特に、ウーズレイという学者による超新星1987Aが紀元前1100万年に誕生してからの経過については、評者は(不勉強なためかもしれないが)初めて見たものである。本文中に数式はほとんどないが、ママが語るほどやさしくはないことを十二分に覚悟して、本書を完読していただきたい。評者と同い年の東北大学名誉教授による訳文は名訳である。