- 筑摩書房
- 239ページ
- 定価 946円
評者は、これまでに何度も申し上げてきたことだが、イギリスの天文学史家アーミティジという人が書いた「太陽よ、汝は動かず」というコペルニクスの伝記に刺激されて天文学の道に入った。中学生の時代に、何で夜空が変化しているのではなくて、地球が動いているの? と素朴に考えたからだった。当時は学校の先生に聞いても、心底納得できるお答えがいただけなかったせいもあり、ミッションスクールに通学していたためもあって、正面から教えてもらえなかったこともあったかもしれない。ともかく、なぜガリレオが教会からにらまれたということも理解できず、唯一頼った本だった。ところが、そういった固定観念をなぜコペルニクスが打ち破り、近代科学が開幕したのかを、本書は心ゆくまで語ってくれている。
本書評読者の皆さん、あなたは本当に地球が秒速30km前後で動いていると思っていますか。今から500年近く前のコペルニクスさんが(数値的にはともかく)主張しているように、ですよ。実は、その裏には確固たる天体観測があったのだ。もちろん当時のレベルは今のアマチュア以下ではあったが、今年5月26日宵の内に起こる皆既月食(途中に6等星の星食あり)をご覧になって、「あぁ月が赤いな」としか思わないなら、あなたはコペルニクスに遠く及ばない。1497年3月9日アルデバラン食、1500年11月6日皆既月食を見て、天文道に入ったのだから。本書を読んで改めて地動説を考えましょう。