- 日本経済新聞社
- 四六変型判、260ページ
- ISBN 4-532-09479-8
- 価格 1,580円
本書著者は数学者である。評者は面識こそないが、この方が暦について書かれた暦と占いの科学 (新潮選書)の愛読者だ。前記の書がどちらかといえば数学書・暦学書であるのに対して、本書は歴史や文学に重点を置いた本なのでより一般向けだ。筆者の手元には2005年第23刷があるが、初版1刷出版が1989年だから、文芸書としてはかなり刷りを重ね、定評あるものといえる。95年に故人となられた後も出版されているわけだ。前書よりは少ないが、数学者らしく数字や数式が散見し、理系の人々にもとっつきやすい。春分の日を計算したり、勝負師にとって“凶”とされるおおぐま座η星(破軍星)が指し示す方向を計算したり、勤労感謝の日(11月23日)が新嘗祭(にいなめさい)に由来し、中卯の日であることを数学的に究明するあたりは、数学者として面目躍如でおもしろい。もちろん大方は文系の人にわかりやすい内容なので、広くおすすめしたい。