- 日本実業出版社
- A5判、160ページ
- ISBN 978-4-534-04455-6
- 価格 1,680円
「ゼロからのサイエンス」シリーズの1冊。真実の章、星辰の章、開闢の章、次元の章という凝った章立てに、こだわりを感じる。たった160ページで宇宙のしくみをゼロから解説するというのだから、大風呂敷を広げすぎでは……と思いきや、古代の宇宙観から最新の宇宙論まで余すことなく、新しい話題を交えながらみごとに紹介されていて思わず感心してしまう。もちろん個々の解説文は短くならざるを得ないが、ビジュアル用語集として楽しみながら役立てられるだろう。ノーベル物理学賞に3人の日本人が選ばれて話題になったが、本書を片手に新聞記事を再読すれば、理解の助けになるはずだ。
まさに肩書を天文“楽”者とされる福江先生らしい、天文学を楽しむための本。評者も心行くまで楽しませて頂いた。
この本は一言で言えば「宇宙論の本」である。もちろん太陽系・系外惑星・恒星物理・活動銀河など最新の研究成果についてもふんだんな説明があるが、最大の見どころは宇宙論分野である。一般的にはわかりにくい、インフレーションや虚時間などについて、こんなにわかりやすく楽しめる本は珍しい。毎朝毎晩(定年後も相変わらず通勤しているものですから)電車の中で、あっさりと読めた。星空背景を中心とした天体写真が多数配置されている(黒地に白字なので老眼の評者にはやや辛いが)。ビジュアルなのだ。著者と評者との文章力のはるかなへだたりも、如実に感じてしまい、ひじょうに参考になった。ゼロからのサイエンスは決して誇張ではない。評者は、いくつかの場所で講演会をさせて頂いているが、その際本書を一般の方々におすすめしている。
ここ数年、福江先生のご出版量の多さが目立っているが、その中でも本書は傑作の一冊といえるのではないだろうか。