- 白水社
- 四六変型判、172ページ
- ISBN 978-4-560-03181-0
- 価格 1,575円
知る人ぞ知る、有名なプラネタリウム解説者で星座史研究家。しかも評者の大学の後輩。もちろん先輩風を吹かしたいからでも、また本書の売れ行きを応援したいからでもなく(いずれも野暮な評者にとっては滅相もないこと)、この本は星座の歴史を正面から研究したいと願う皆さんに、ぜひおすすめしたい本である。
とはいっても、思想がどうの、宗教がどうの、民族性がどうの、と語り始めるとやたら迷路に入りがちなこの分野は、星空の感覚を本当に持っていないと、一般の人々の感覚からかけ離れてしまう恐れがある。大学で正しく天文学の勉強や観測を行った経験を持っているからこそ、正しく星座史を語ることができるのだ。
本書を読みながら、必ずしも方向性が同じとはいえないが、アレンの名著「スター・ネームズ」を思い出して、評者は並行参照してしまった。もちろん1世紀も前に書かれた西洋中心の本とは違って、日本やアジアの星座史は筆者の独壇場だ。特に現場を見ている人のルポは、大いに説得力がある。
そして、本書の最後に著者が語る「なぜ人は星の物語を語るのか」というメッセージは、少なくとも天文家を自認する皆さんには、全員読んで考えていただかねばならないものである。