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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

図説 100のトピックでたどる 月と人の歴史と物語

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図説 100のトピックでたどる 月と人の歴史と物語

  • デイヴィッド・ウォームフラッシュ 著、露久保由美子 訳
  • 原書房
  • 284ページ
  • 定価 2750円

月と言えば日本人は、月に魔女の横顔を見る欧米人と異なり、月に団子とお月見を楽しんだものだ。科学に目を向ければ、ダ・ビンチは三日月の暗い側がボンヤリ光っているのが地球による太陽の反射光であることに気づき、コペルニクスは月の公転により星食や日食が起こるのなら、地球が太陽の周りを公転していても良いことに気づいた。ハリオットやガリレオが月面にクレーターや海を見つけ、ニュートンが月の運動から万有引力の法則を見つけ、グリュイテュルゼンは月人の存在を考え、ジュール・ヴェルヌは月旅行を考案し、ツィオルコフスキーを経てアポロに繋がった…といった科学の発展は、天文学に止まらず、人類史の中で燦然と輝いている。

面白いですよ、本書は改めて月と人類の関わり合いを考えさせてくれること、間違いありません。とくに評者が感動したのは、「月の歴史を解明する」のコーナーで語られている、1975年に発表されたハートマンとデイヴィスによる、いわゆる月と地球形成初期の大衝突に関するくだり。2021年の現代では、ほぼ定説になった。

残念ながら、いずれにもわれらが日本の同朋は関わってこない。「かぐや」の活躍も、革命的とまでは行かない。お月見の際には、なにか突拍子もない発見がもたらせられたいものだ。そして本書最終章「月面インフラの構築」で日本の天文学者の活躍を、是非とも期待したい。ともかく、本書は表題のとおり、月について深く考えさせられる良書である。

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