- 原書房
- 322ページ
- 定価 3080円
数年前から続けている、天文学者が何をきっかけにして天文学の道に入ったかを調査している評者にとっては、本書は願ってもいない資料となった。評者自身、小学四年生のころ、近所のお肉屋さんのお兄さんに覗かせてもらった土星の姿に感動感激して、当時東京の本郷にあった○○商会という望遠鏡屋さんでキットを購入し、組み立てあげた(実はその前にガラス鏡のみを購入し磨いたが失敗した)。貴重な体験だった。なにしろ、当時数万円もしたキットだから、八百屋さんに買い物に行く手伝いで等で10円また10円と貯金していったのだ。目標額に達するまでは、夕方の学校に忍び込んで理科室の望遠鏡を使い三人の仲良し達とにわか観測会を行った。ともかく貴重な体験を重ねた。
本書は、現在現役バリバリの天文学者で若手観測者。数々の功績で賞も受けている人だが、中でも中心核に中性子星がある赤色巨星のソーン・ジトコフ天体の候補を世界で初めて観測したことで知られる人。同天体のことも詳しく説明されているが、本書のアチコチに語られている観測や研究を通して知り合った天文学者が語った、天文道に入った動機が語られている部分が特に面白い。要するに、今までに語られることがなかった異色の天文学書なのだ。評者は本書にハマリ、あわてて電車で駅を乗り過ごしそうになったこともしばしばだった。天文学者が変わり者でなく、普通の人であることが、よーく判ります。