- 原書房
- 272ページ
- 定価 2970円
本書ほど読みながら、評者の心臓をドキドキバクバクさせた本はない。1735年から1744年までフランス科学アカデミーが南米アンデス山脈の麓ほぼ赤道直下のグアヤキル近郊に送った緯度測量隊一行(正確には赤道測地測量隊)の、手に汗握る詳細な冒険談である。
評者も半世紀前の学生時代、大学校舎屋上で六分儀による測量を体験させてもらったが、それは言ってみれば“遊び”のようなモノ。とても命をかけるようなものではなかった。ジャングルの中で原住民や毒蛇に襲撃されることなく、ノホホンと太陽高度を(当然のことながらほぼ真っ黒なフィルターで目を焼かないように守りながら)測り、六分儀の扱いに慣れるだけだった。測量隊のメンバーが目指した、地球の形の緯度による違い、即ち赤道半径と極半径の相違という崇高な目的とは、全く無関係な、遊びと言える程度の測定だった。それでも、一学年1人という珍しさを胸に、胸を張って実習していた。
デカルトとニュートンの争いが熾烈だった当時、本書の主人公フランス人のコンダミーヌらによって、赤道半径の方が極半径より長いと主張したニュートン派を勝利させた経緯が、本書を読むと手に取るように理解できるのだ。本書でしか見たことがない13名の関係者の紹介も、本書最終章に詳細に記されている。いずれも200年以上前に活躍していた人たちだが、測量という科学を通じてまるで現代人のように感じ入ることができる。お勧めです。