- PHP研究所
- A6判、311ページ
- ISBN 978-4-569-67281-6
- 価格 700円
のっけから評者のことで恐縮だが、天文学が観測天文学と理論天文学に分けられるなら、評者は断然観測だ。机に向かって星のことを研究するよりも、夜空に向かって研究するほうが何倍も楽しい。だからこそ、学生時代、大学の天体観測室に住んでいると言われた。
本書は、その対極に位置する本。なので、読み終えるまでいつもの数倍の時間が必要になってしまった。だが、それもおもしろかったからこそ。超速読ではなく超遅読、それこそ一字一字読んだような次第。
第1部「見えてきた宇宙の姿」は観測天文学の成果紹介で、類書にも多く見られるもの。本書の真髄、理論天文学は第2部「相対性理論と量子論」、第3部「宇宙論の最先端」にある。特に第3部のインフレーション宇宙論は非常に詳しく、おそらく監修者である佐藤勝彦氏のチェックが相当入っただろう。じょうずな説明がなされており、評者のような理論家としての頭を持たない天文屋でも、十二分に理解できた(つもりになった)。目次を見ただけでは、おそらくギョッとして書棚に戻してしまう方々が多いだろうが、ぜひ本文をじっくりと読んで欲しい。まじめな高校生なら読みこなせるはずだから。
確かに、第二部の中見出しの列、「量子論の発端」「量子論の核心に迫る」「究極の素粒子を求めて」「ビッグバン宇宙論」「インフレーション宇宙論」「宇宙開闢を探る」「素粒子の世界の対象性」「ダークマターとダークエネルギー」「超ひも理論からM理論へ」、では恐れをなさないのが無理というもの。だが、般若信経を読むくらいのつもりで、これらの最新宇宙論に挑戦してみよう。そうすれば、現在の宇宙の謎がわかる。