- PHP文庫 刊
- A6判、247ページ
- 2009年11月
- ISBN978-4-569-67352-3
- 価格 580円
例によって駅のキオスクの書棚で本書は見つかった。
2009年11月18日初版刊行の文庫書き下ろし作品である。本書は安いだけがとりえではなく、中川先生(本当に高校の先生:元JAXA教育グループ副主幹)がきっちり監修した、科学的に正鵠を得た本だ。キオスクでこんなおもしろい本が買えるというのはありがたい。
厚さ1cmの文庫本にしては取り上げた項目が非常に多いが、小さい文字でびっしりと書かれていて、初心者にも丁寧に解説されている。そしておそらく編集者の力量だろうが、文章も読みやすい。
「宇宙が膨張すると、銀河も膨張するの?」「銀河と銀河が衝突したら、星にどんな影響があるの?」など見出しのつけ方に工夫が感じられる。また監修者のおかげか、数値や用語・文意に誤りが見当たらない。
ただ、こだわり天文家からひとつ注文させていただくことは、この手の本ではやむを得ないことだが、数値の有効数字でどの桁までが確実なのかを是非示していただきたかった。本書では1桁目で数値が丸められていたり、小数点下3桁も4桁も示されていたりで、かなりバラバラだ。有効数字を一桁あげるためにそれまでの10倍以上の努力が必要なことを一般の方々、特に文系の皆さんにもぜひわかって欲しいと思っている。
本書は、今はやりの「ビジュアル」本ではあるが、カラーの写真や説明図が一切使用されていない。おそらく価格の問題からだろうが、これがかえって新鮮に思える効果を上げている。また、他書には決してみられなかった説明図など随所に工夫が見られる。特に131ページの「月の公転周期と自転周期のたとえ」は、その最たるもの。評者は「これ、いただき!」と思っている。