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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

野尻抱影 星は周る

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野尻抱影 星は周る
 

  • 野尻抱影 著
  • 平凡社 刊
  • 11.7×28.2cm、217ページ
  • ISBN 978-4582531527
  • 価格 1,512円

著者は、評者五島プラネタリウム解説員時代、遠い昔となってしまったが、同館初代学芸委員会会長だった方。もちろん故人(1977年10月30日没)になられておられるが、未だに評者の先生である。故に、その書評を、と言うのは誠におこがましい話だが、仕方がない。本書は、現在も書店で売られている筆者の多数の著書抜粋本である。いわば名随筆集と言って良い。評者もかつて、五島で月1回夕方行われていた星の会一般クラス講演会の講演要旨原稿を戴きに訪れたことがある、先生の桜新町のご自宅について述べた本書掲載文を読み、感慨にふけることができた。

なにしろどの原稿も、誰もが読むのに一苦労どころではない、百苦労はした。本職は英文学者だった先生が書いた英文ではなく、これ日本の文字? と思えるような得体の知れない書体だったからだ。いやはや、印刷原稿を起こすのに苦労しました! でも本書から星の文人の情熱は、きっとどなたにも伝わることだろう。

先生の夢は、評者も身中に温かく受け継いでいるつもりだ。明治〜大正〜昭和のよき時代に、星や天文に走った方なら誰もがお世話になっている野尻先生の、本書は言わば集大成である。本書に挟み込まれた別刷りリーフレットで述べられている池内了先生の「悠久の星空の下で」という約2000字の文も、これまた最高の名文である。読まれたし。

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