- 平凡社
- 新書判、216ページ
- ISBN4-582-85309-9
- 価格 756円
UFOといえば、空飛ぶ円盤だエイリアンだと、ごった煮にしていた評者が真に恥ずかしい。本書によると、第二次世界大戦終結と空飛ぶ円盤神話開始、ベトナム戦争終結とエイリアン神話開始という時代区別があるのだそうだ。さらに「第三次世界大戦(東欧の民主化・ソ連邦の解体)」の終結に伴い、UFO神話は再変革し、物議を醸した宇宙人解剖フィルムの公開で従来のエイリアンに本格的死が訪れたとして、またヘール・ボップ彗星の後に隠れて訪れた宇宙船に搭乗して地上(この世)を去ったというヘブンズ・ゲート教団集団自殺事件を分析する著者の見方は、大学で現代アメリカ文化の研究者として活躍する人の論文として、実に面白くかつユニークな意見である。天文学者ではない評者は、職業上からもまた一介の天文愛好家としても、人間と天文あるいは宇宙との関わりを、時の流れ、すなわち社会と連関した歴史として考える見方を大切に思ってきたが、宇宙の中での生命を「今は宇宙にはいたるところに生命がいるはず」と言いのける天文学者が多いことに、そう簡単にとらえるのはどうかと考えてきた。ことによったら、宇宙人は人間の思い過ごし、つまり何らかの想像物なのではないかと思っていたのだ。本書により幾分それに解答が与えられたように思える。ところで評者は60代、著者は40代、ポストモダン(現代の後)を生きなければならない20代の若い人に、そしてできれば広く(例えば災害対策者・公安関係者などにも)本書を読んで考えていただきたい。今後、地球にどのようなUFO神話やエイリアンが登場するかを、である。ひいては、それがどのような社会現象・人類的ヒステリーが背景にあるかをも、ぜひ考えていただきたい。そうすれば、本書の価値は何千何万にも倍加するだろう。