- 平凡社
- 17.4×10.6cm、251ページ
- ISBN 978-4582858754
- 価格 886円
本書は天文書ではなく、表題の通りに科学史書である。だが、紹介者11名の内、4名が天文学者または天文関係者である。顔ぶれは、高橋至時・志筑忠雄・司馬江漢[画家]・国友(一貫斎)藤兵衛である。更に改暦に絡んだ関孝和を入れれば、半数近くが天文関係者となり、江戸時代の西洋科学の主流が天文学者だったことがおわかり頂けよう。
それぞれ父方母方親族などが詳しく紹介され、いかに当時の科学者になる人にとって、環境が重要だったことが理解される。残念ながら、評者は親族内でポッと出である。よって、かなり変わり者として苦労した。まぁ、読者の皆さんも似たような者だろう。麻田剛立に師事して暦学者として、通称暴れん坊将軍吉宗の遺志を継いで、寛政暦に取り組んだ高橋至時は、日本全図を完成させた伊能忠敬を育てた男として有名だ。そのため、以前浅草の源空寺(菩提寺)に評者はお参りに行ったほど。本書にもその墓石の写真が掲載されている。本書最初の人として紹介されるのも当然のことだ。その次に掲載の志筑忠雄に関しては、他人との付き合いが余り得意でなかったためだろうか、本書ほど詳細に記された例は知らない。だが、引力・重力・遠心力・真空・+・−・÷・√とコーヒーとニュートンの科学思想の紹介者と来れば、皆さんも本書を読むしかない! 司馬江漢や関孝和は、美術史や数学史を飾っているのでそちらの方で。国友藤兵衛は天体望遠鏡制作者だ。ご購読を。