- KKベストセラーズ
- 6.2 x 4.4cm、224ページ
- 2009年12月
- ISBN 978-4584132104
- 価格 1,575円
SF書を連想させる書名とシンプルな表紙。思わず書店でうなってしまった。だが、鳴沢さんが小説家ではないことを知っている評者はすぐ見抜いてしまった。あの「WOW!」シグナルのことでしょう?と。
主役はもちろん、米・オハイオ州立大学のSETI専用電波望遠鏡「ビッグ・イヤー」が1977年8月15日に、6EQUJ5という電波強度の信号として打ち出した72秒間の不思議な暗号のことである。
でも本書はその不思議な電波信号の解説書ではなく、主題はその後日本中を揺るがし熱狂化させた(評者の知り合いにもSETIをやっている人がいる)ドラマの顛末なのである。鳴沢さんに落ち込んだときがあったなど、本書で初めて知ったこともあるし、愛情溢れる奥様の支えも知らなかったし、また全国同時SETIの実施日直前に起こった水害のアクシデントも含めて、本書は高貴な人間ドラマである。
個人で動くことが多い変光星研究と異なり、ビッグ・サイエンスの一つとして電波望遠鏡も光学望遠鏡も協力しなければならないこの分野の性格が、まさしくこの見事な連係プレーを歴史に残したのであろう。物理学がどうの、電波技術がどうの、生物進化がどうの、という小難しい話は本書には一切出てこない。あるのは、探索という人類共通の好奇心が、かくも人の心を硬く結びつけるものかという人間観である。中学生、あるいは小学生をも感動させるはずである。ぜひ、万人にお勧めしたい。