- ポプラ社
- 新書変型判、220ページ
- ISBN 978-4-591-11050-8
- 価格 599円
書評とは、その本が出版された価値を客観的観点から評価し、著者の訴える点を浮き彫りにさせる行為であるとかねがね評者は考えているが、これがそれほど簡単ではないことも常日頃から身をもって感じている。なにしろ評者は、天文台や大望遠鏡を所有しているわけでもなく、自らの資金で犬を育てたこともないなので、著者と愛犬チロの間のきめこまやかな関係を、本書を読むまでは共有することはできなかった。
だが今は違う。相変わらず我が家には、人間とときどき蝿と蚊しか居住していない(あっ忘れていましたピグミー・シュリンプが居ます)が、雑種でよいから犬と同居したいなと今は考えている。著者とチロちゃんとの心の交流が、著者の優しい筆致からよく感じ取ることができるのだ。
猫可愛がりはあるが、犬可愛がりという言葉はない。猫は自分こそが主役だが、犬は共存者だと言われる。だからこそ伴猫はありえないし、愛猫家には申し訳ない言い方だが、犬は家族の役割分担に徹した忠実な一員なのだ。自分の役割が(チロちゃんの場合は天文台長)わかっているのではないかとすら考えてしまう。そのようなエピソードが本書には満載である。
本書はやはり小学生、できれば4年生以上、ちょうど空間認識が確立し始め、星や宇宙に対する関心が見え始めるころの子ども達にうってつけの本である。ぜひ、前作の「星になったチロ」と一緒にお買い求めになるのをお勧めしたい。
なお、本書は2009年7月に第1刷が発行されたが、2003年に発行された本の新装版である。