- 丸善 刊
- 26.2 x 18.8cm、208ページ
- 2009年12月
- ISBN 978-4-621-08196-9
- 価格 3,024円
世界天文年だった2009年、ガリレオに関する本や伝記は山のように出版されたが、これはぜひおすすめしたい本だ。
都内近辺の書店を探し回りやっと発見したが、それだけの価値があったと見なす本である。なぜなら、本書のページをめくるごとに科学について深く考えさせてくれたからである。
ガリレオといえば教会と対立し科学に殉じた人として有名だが、実は自分の娘たちを修道女にさせた(ただし、「尼寺に行け!」というような日本でのイメージとは大違い)ほどの根っからのクリスチャンである。だが実は、天才や秀才は(議論の先が読めてしまうため)敵が多い(評者の恩師がそうだった)という好例だったのだ。言ってみればガリレオは、「はめられた」のである。それは本書87ページからの「騒動を起こした手紙」を熟読いただきたい。
そういったエピソードを読んでいて自然に評者の頭内に浮かんできたのが、近頃の地球温暖化?寒冷化論争だった。科学の中ですら真っ向から対立しているではないか。人間の解釈というのはよくよく誤るもの。だからこそ科学は面白いのだ。評者など、最近アルゴルやミラやアルマーズを観測しながら、細かい予想外の変動か誤差かを発見するたびに、これまでの学者の解釈は誤っているのではないかと思うことが屡々である。
表紙には「ジュニア・サイエンス、25の体験学習<ためしてみよう!:面白さにつられて評者は全部チャレンジしてしまった>」とあるので、一見子供向きのように錯覚するが、それはとんでもない間違いで、実は大変に大人向きの本である。
評者は、1634年に哲学者T.ホッブスが軟禁中のガリレオを訪ねたことを本書で初めて知った。そこでホッブスが自らの哲学中にガリレオの考えを取り入れたことも。また、我々が宇宙に小さな歩みを続けていく中で、ガリレオの時代はただ望遠鏡をのぞくにも勇気が必要だったはずというバズ・オルドリン宇宙飛行士の言葉も誠に含蓄深い。
このように、本書は勉強になる内容ばかりでなく、その50枚を超える掲載図版たるや、思わず本物を見たいと思ってしまうほどの価値あるものが収載されている。ぜひお勧めしたい。