- 丸善出版
- 242ページ
- 定価 2640円
著名な天文学者たち三名が、宮沢賢治作の有名物語「銀河鉄道の夜」について、あらゆる角度から見込んだ本。評者は本書を読み終えてから、家の書庫のどこに入ったか行方不明となった「銀河鉄道の夜」を求めて書店に行き、改めて購入し読みふけった。すると、これまで「メルヘン」だからと諦めていた数々の疑問点が明確に解決したのである。
だが、今もって不明の謎もある。評者もある観光会社からご指名され、オーストラリアに指導員として派遣された1986年、同地で40名の皆さんと共に観望したハレー彗星を、1910年盛岡中学の二年生だった星好きの賢治は、何故か見ていないのだ。
評者には賢治と妙な因縁が2つある。五島プラネタリウムの恩師・野尻抱影先生が後に賢治の親友となった保阪嘉内の甲府中学での舎監だったことと、評者の父が勤めていた三省堂書店出版の星座早見盤(評者にもおなじみ)の愛用者だったことだ。
賢治に登場するあれやこれや。(1) オリオン大星雲は魚口星雲と紹介されているが、これは須藤傳次郎著に初出である。(2) 銀河鉄道のモデルになった岩手軽便鉄道は、現在のJR東日本の釜石線か花巻電鉄のどちらか。(3) カシオペア座の三目星(さんもくせい)と名付けた星は、どうやらカシオペヤ座のγ・δ・εの3星らしい。インド神話に登場するマカラ(摩渇大魚:まかつたいぎょ)だとも言われている。本書は本当に勉強になります!