天文方と陰陽道
- 山川出版社
- A5判、90ページ
- ISBN4-634-54460-1
- 価格 840円
研究書にいくらか書かれてはいるが、江戸幕府の天文方についてまとめられた一般書は少なく、その意味で貴重である。前半で、特に近年刊行の一般書にはほとんど記されない、日本各地で刊行された地方暦が紹介されている。表向き天皇から下賜される形になっていながら公家社会と大寺社体制を背景にした、領暦(官暦)に対するアンチテーゼとしての役割分析が、淡々と描かれてはいるがおもしろい。
後半は、特にプラネタリウム解説員の話題検討に役立つと思われる。犬公方と嘲られた五代将軍綱吉と、日本人初の暦作成者・日本における天文観測の開拓者と言われた渋川春海との意外な繋がり、暴れん坊将軍で英君と称された吉宗と、天文方と土御門家の政略、麻田剛立門下二人の秀才高橋至時と間重富の活躍など、小冊子(90P)中に簡潔に記されている。日本の暦制度と天文方の仕事に興味を持つ方は、ぜひ読んで欲しい一冊である。