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幻の惑星ヴァルカン アインシュタインはいかにして惑星を破壊したのか

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幻の惑星ヴァルカン アインシュタインはいかにして惑星を破壊したのか
 

  • トマス・レヴェンソン 著、小林由香利 訳
  • 亜紀書房
  • 19×12.4cm、280ページ
  • ISBN 978-4750515281
  • 価格 2376円

読者の皆さんは、ヴァルカンと呼ばれた惑星があったことご存じですか。いや、忽然と消滅したわけではなく、一時一部の観測者に存在すると信じ込まれた‘幻の’惑星である。評者はベテルギウスやアルマーズ(ぎょしゃ座ε)の測光を毎晩行っているが、同時にペルセウス座付近(天の川河岸)に新星が出現していないかどうかも調査し、記録し続けている。その際常時気をつけているのは、見落とし・見間違いである。

太陽黒点を観測していると、残像のような黒い点を発見する可能性は0ではない。見えてきたり、見誤ったりするのだ。あるはずと信じていると見てしまうし、無いはずと信じると見えなかったりするのは視覚の生理現象だ。理論家のアインシュタインが‘空間の歪み’でそれを説明したことが、本書を読めばそれがよく判る。19世紀初頭に続々と小惑星が発見され、同世紀半ば軌道計算から海王星の存在を突き止めたルヴェリエが、同じく水星の近日点移動から水星内に軌道を持つ未知天体の可能性を追求し、遂にレスカルボーというアマチュア観測家がヴァルカンを発見、次々と見出した人物達による報告、だが水星近日点移動がヴァルカンのせいではなく、空間の歪みによるものであることが、日食観測から判り、結局アインシュタインがヴァルカンを追放したという物語なのだ。

実にドラマチックで面白く、本書によって現代物理学の根幹を知ることができますよ。

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