- 化学同人
- 四六変型判、232ページ
- ISBN 978-4-7598-1325-8
- 価格 1,890円
評者は、本書評のためか、最近あちこちから「良い天文書を紹介して欲しい」と言うご依頼やご質問をいただく。先日もあるご婦人から「手ごろな内容と値段の入門書をぜひ!」というお話があり、すぐさま本書をご案内した。
さすが渡部先生。アマチュアの心理を知り尽くされた文章だ。数式や表、元素名、横文字などであふれた本を素人が敬遠するのは当たり前のこと。本書に登場する数式は唯一「ドレークの方程式」のみである。みなさんにもご安心いただきたい。
第1章「見上げることから始めよう」では、始めの一歩は肉眼で天体を見ることからだと主張されている。第2章では春夏秋冬の代表的な星空を具体的に案内しているが、渡部先生の説明はプラネタリウム解説員顔負けだ。ギリシア神話あり、俳句あり、古代日本神話あり。評者は、かんむり座の案内に登場する「星石」を絶対に現地で見たいと思っている、第3章「惑星たちのダンス」はやや教科書的だが、堅苦しさを感じさせないのもさすがである。第4章以下も、先生ご専門の彗星・流星、星の一生、銀河構造、宇宙論、宇宙人など、気軽に読める説明ばかりで、これだけ一通りマスターすれば、入門は完璧だろう。数多くの本が世界天文年の星空ブックフェアを飾る中で、さすがはその推進役と感じさせる一冊だ。
惜しむらくは、変光星の「へ」の字も登場しないこと。せめて、ペルセウス座のアルゴルやくじら座のミラはご紹介いただいても良かったのではないだろうか。アルゴルとミラの観測者を自認する評者にとっては、まことに残念無念! まぁ、変光星というのは一般受けしないのかもしれないが……