- ナノオプトメディア
- 四六変型判、146ページ
- ISBN 978-4-7649-5500-4
- 価格2,993円
評者の同級生は物理学科を卒業後、京都大学大学院の宇宙物理学専攻に進学した。西の京都大学は、東の東京大学、北の東北大学と共に帝国大学と呼ばれた時代から天文学を学ぶ者の憧れの進学先だった。伝統ある名門におけるの昔と今と未来の天文学が展望できる名著である。といっても、そんな大書ではなく150ページ弱の気軽に読める本だ。重要な画像が全て添付DVDに記録されている。
第1章「京都1000年の天文学散歩」は、本文でしか味わえない。安倍晴明・藤原定家・角倉了以・土御門泰邦から小林誠・益川敏英(敬称略)までと、知る人ぞ知る人ばかり。京都はやっぱりすごい。もちろん山本一清の時代(昭和前期)にあった京大と東大の競争は有名だが、理由はともかく、本書では省かれている。東の東大が星学科→天文学科と呼んだのに対し、西の京大は宇宙物理学学科と呼んだのが対抗性と独立性を表現していると評者は昔聞いた。
第2章は京都大学の伝統的な研究テーマ、太陽物理学と宇宙天気予報について。以降、赤外線天文衛星あかり、垂直離着陸型おむすびロケット、宇宙太陽発電所(SPS)計画などといった話題が続く。これらの貴重な画像がDVDに収納されており、特に衛星「ようこう」が見た太陽活動3641日の記録という特典映像は大いに楽しませていただいた。
ところで、第2章の冒頭で京都大学の花山天文台が「天使の卵」という映画撮影のロケ地に選ばれていたというエピソードが登場する。天文台は風光明媚で山科の景色がすばらしいからだ。そんなところで火星を研究されていた宮本正太郎先生をはじめとする研究者たちがまことにうらやましい。