- 恒星社厚生閣
- 266ページ
- 定価 2750円
今までに見たことがない、珍しい貴重な内容の本。評者の女性観に新しい視点をもたらした本である。よく電車内で見かける、このコロナのご時世にマスクを外し合って辺りかまわずペチャクリしゃべりまくっている女性のグループや、手鏡に向かって口紅を塗りまくっている女性には感嘆するばかりだが、一方でかつての欧米では「コンピュータ」と呼ばれた計算専門の女性が多数いたという。評者も学生時代に手回しの計算機(読者の皆さんご存じですか?)で、よく計算していたものだ。
本書によれば、暗い世相の時代、空間も暗くて女性は夜空を見上げることができなかった。だから、天文台にはほとんど女性がいなかったという。評者の妻はそれが面白くなくって、評者と結婚し、しばらくの間夜の観測に付き合ってくれた。子供が4人産まれて忙しくなり、子供が成人・結婚後、保育士となって昼間忙しく、夜は早くに休んでしまう今日このごろだが、かつてはよく一緒に変光星を観測したものだった。ナツカシイなあ。
本書には、キャロライン・ハーシェル、ジョスリン・ベル・バーネルをはじめ、10名以上の世界の女性天文学者・天体観測家の生涯を紹介してくれている。日本女性も4人いる。中でも、上野の科学博物館で太陽観測をほぼ半世紀続けられた小山ひさ子さんは、評者が五島プラネタリウムの解説員時代に評議員の一人だったこともあり思い入れが深い。