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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

地球温暖化は本当か? 宇宙から眺めたちょっと先の地球予測

表紙写真

  • 矢沢 潔 著
  • 技術評論社
  • 四六判、232ページ
  • ISBN4-7741-3001-X
  • 価格 1,659円

著名なサイエンスライターのこなれた文章で、さっと読める本ではあるが、科学の在り方を巡り重い課題を提起する、決して気軽には読めない本。評者は40年も前に恩師から貰った「太陽活動の極大極小予報は誰がやっても当たらない」という言葉を思い出した。多少予報確度は上がったが、今でも大変難しい。気象変動原因の御大がこの有様だから、他は押して知るべし。大気中のCO2が増えれば、温室効果によりグリーンランドや南極で氷が溶けて、世界は大洪水に見舞われるという単純な図式通りには行かない。もちろん、地球温暖化論者達は、詳細なシミュレーションに基づき予言を行っているというが、この本を読むと、それが一種の信仰で彼らは最初から結論を信じているフシがあるようだ。たとえば氷河時代が起きたことを地球運動の変動で説明しようとしたミランコビッチ理論や、無黒点期と近世小氷河期との関係など、天文関係者なら常識の大変動も、CO2増加説には都合が悪いためか無視されている。シミュレーションや観測結果の解釈もご都合主義で、科学ではなく、著者いわく背景に欧州各国の政治臭が漂っているそうだ。日本ではあまり知られていないが、世界には地球温暖化論に強く反対する科学者がかなりいる。ともかく読み応えがある面白い一書だ。

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