- 太田出版
- 224ページ
- 定価 1980円
著者は、2022年に東大大学院を卒業し博士号を持つ工学者。現在はJAXA宇宙科学研究所に所属されている。福岡県生まれなので10年間ワンルームで一人暮らしを続けておられ、本書タイトルに相応しい。評者も大学卒業後、数年間下宿で一人暮らしを経験したが、著者とは異なり、星を見たのは大学のドームで20cm反射望遠鏡と10cm屈折望遠鏡を使って(と言うか使われて)だった。光電管などの測光装置を使わせてもらうなど、かなり専門的な経験だったおかげで、今もいっぱしの専門性を有している。ただ、同学年一人しか学生はいなかったから、観測は淋しいものだった。
本書著者の「はじめに」は、同じ孤独な天文学徒として共感が持てる。すなわち、著者のワンルームも、となりの部屋も、全て広大な宇宙と同じ物理法則に支配された一空間だから、というごく当たり前の認識だ。このことはとても重要な認識とか知覚であり、改めて考察することでもないが、でも誰もが、人生のどこかで解明しておく必要があることでもある。
本書は今時の若い(30前の)研究者が日々どのようなことを体感し、苦労し、生活しているかを書いた本である。80前の評者にとっては4人の子供より若い。そんなことから、たいへんに勉強になったのである。お爺さんお婆さん世代の人に、ぜひ読んでほしい。