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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星を追い、光を愛して 19世紀科学界の巨人、ジョン・ハーシェル伝

表紙写真

  • ギュンター・ブットマン 著/中崎昌雄、角田玉青、日本ハーシェル協会 訳
  • 産業図書
  • 四六判、260ページ
  • ISBN 978-4-7828-0166-6
  • 価格 2,625円

チオ硫酸ナトリウム、なんて申し上げても、今の若い世代の写真家には分からないだろうか。評者が学生時代に天文研の暗室(大抵、半日はそこで暮らしていた)で一番お世話になったクスリ(もちろん大麻・覚醒剤ではない)である。要するに定着剤(ハイポ)だ。ジョン・ハーシェルはその化学的性質の発見者である。加えて、ネガ(negative、陰画)とポジ(positive、陽画)の命名者でもある。だが、筆者ブットマン氏が言うとおり、一般にジョンは天王星発見者ウィリアム・ハーシェルの息子としてしか知られていない。

ところがどっこい、彼は功績の数では天文学者の中でも指折りの存在なのだ。彼の研究は父から継いだ天文学ばかりでなく、写真術や化学から地球物理学、鉱物学、植物学までと実に幅広く、本書によれば進化論で有名なダーウィンにまで影響を与えたという。

本書は、ジョン・ハーシェル研究の第一級の本である。と同時に、中崎氏、角田氏、日本ハーシェル協会による名訳書で、文章も内容も極めて優れている。評者は本書を一気に読みきった! 以前ご紹介した「ビクトリア時代のアマチュア天文家」同様、ぜひおすすめしたい。きっとみなさんはジョンの人柄の虜になるだろう。

本書によれば、著者は元図書館司書で御年80歳。天文学者の伝記資料を4200名分収集しているという。負けた!評者も天文学者の名前と生年月日と簡単な履歴だけを収集しているが、はるかに及ばず、今年3月現在2602名である。

ウィリアム・ハーシェルといえば、天王星の発見や40フィート望遠鏡など、すぐに連想できる業績があるが、その一人息子のジョン・ハーシェルの業績については、あまり知られていない。本書は偉大な天文学者の陰に隠れたジョンの生涯を丹念に追った定評ある伝記で、原著は1965年刊。彼の研究対象は天文学のみならず、数学や物理学、化学、地球物理学、鉱物学、植物学、さらに写真術と幅広く、いずれにも一流の業績を残している。

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