- 青土社
- 238ページ
- 定価 1980円
創作家の魚豊さんと哲学史家のアダム・タカハシさんの対談や、池内了さん、加藤賢一さん他31名の(評者が知らない大部分は天文学者ではない)方々による、コペルニクスの評論書。評者は最近、コペルニクス転回に非常に興味を持っており、なぜそれが中世と近代を分ける動機になったかを知りたいと思っている。本書は、雑誌の体を借りているが、著者の知識や立場によって書かれた本で、コペルニクス(ポーランド語ではコッペルニーク)についておそらくこれまでにない真理を知る格好の本である。
コペルニクスといえば「地動説の父」、あるいは「地動説の元祖」と言われることがある。度々誤解されることではあるが、正しくは元祖ではなく、再興者と言うべき人だ。元祖は前3世紀半ばのギリシャの天文学者アリスタルコスとフィロラオス。また、コペルニクスは地動説の証拠を見つけたわけでもなく、その確固たる証拠となった光行差や年周視差などの発見は、はるか後代のこと。しかもコペルニクスは、地球が完全な天体であるために当時は必要不可欠とされていた円軌道論を当たり前のごとく踏襲し、後のケプラーが観測から証明し現代では当たり前のこととされる惑星の楕円軌道は考察外だった。それを後に正論としたのが、1497年3月9日イタリアで見た月によるアルデバラン食だった。天体現象は人を変えるものですね。