- ソフトバンククリエイティブ
- 四六変型判、248ページ
- ISBN 978-4-7973-3926-0
- 価格 1,000円
「物理・化学編」と同時出版の本。科学ジャーナリスト(SF乱学者も自称されているそうだ)である著者は講談社ブルーバックス(評者もずいぶん読ませてもらった)などの著作で有名で、その専門範囲は非常に広い。本書も宇宙編5章、地球編と生物編各3章とバラエティに富む。
本書の大きな特徴は、その構成にある。「エッセンス」と称する導入部で始まり、理論の概要、理論が生み出された背景、理論の発展と、表現はやさしいがいわば論文スタイルだ。とくにその中で、理論が生み出された背景を逐一丁寧に説明されているのが重要で、読者が問題点を絞り込むのにとても役立つはずである。また、エッセンスで重要な言葉が先に抽出されており、また本文でも重要用語は青字で表示(ブログならリンク先にすぐ飛べることになるのだろう)され、わかりやすい。著者が前書きで述べられているように、インターネット時代の本の書き方の一つだろう。
いくつか気になる誤りは、著者がその分野の専門家でないことによるのだろうが、指摘しておきたい。まず、食変光星の変光についてだが、「AとBの2つの恒星が重なりあう状態では、光は合わさってさらに明るくなる」「AとBの2つの恒星が離れあう状態では、光は暗くなる」とあるがまったく逆だ(食変光星アルゴルの観測者としてはまったく困ること)。また、「1782年グッドリックによって食変光星アルゴルが発見された」は、「1667年モンタナリが変光を発見した」が正解である。また、「コペルニクスは僧侶であった」も誤りで「聖堂参事会員ではあったが医者」である。また「搬送円」という言葉は現在ほとんど使用されず「誘導円または動円」である。天文分野以外での修正は、みなさんにお願いしたい。