- ソフトバンククリエイティブ 刊
- 17.4 x 11.4 cm、232ページ
- 2010年2月
- ISBN 978-4797344073
- 価格 1,000円
サイエンス・ライターの金子氏の著作はいずれもきっちりとした取材と学会主流の研究論文をサポートされている点で信頼度が高いものであり、本書もそれにたがわない。
いわゆる6500万年前の巨大隕石衝突が必ずしも絶滅の原因ではないことや、絶滅の危機がないと生物が進化を止めるなど、天文界やプラネタリウム界での通説を覆すような面白い本だ。この種の議論が、天文学的立場ばかりでなく生物学・地質学、それに地球物理学の充分な知識と感覚をもって、総合科学として検討しなければならないことが改めて良く理解できる。
地層内でのイリジウムの分布状況などから、隕石衝突の強力な物証とされたものの多くはマントル・プリュームの周期的浮上説で説明できるというくだりなどはとても面白く勉強になる。
人類も含めて現生生物の大量絶滅が現在進行中と考えている生物学者が70%もおられることや、恐竜に替わって鳥が恐竜から誕生・大進化したのは、地球大気内の酸素量の大きな変動によるもの、といったことも評者は初めて本書で知った。
だが天文屋の評者にとって何より興味深いのは、超新星爆発やガンマ線バーストが生物進化に大きく関わっている可能性がある、という最終章の記事だ。これらを普及書として一般向けに紹介した本を評者は他に知らない。
至近に迫ったベテルギウスの超新星爆発の可能性が新聞でも取り上げられるようになった現在、これからの地球生命を考えるにあたって大事なのはIPCCの地球温暖化議論だけではないですよ!と評者は主張したい。