- 集英社インターナショナル
- 13.3×18.8cm、173ページ
- ISBN 978-4797672992
- 価格 1,188円
著者は著名な生物学者、ただし評者が教えを請うた大学にいた生物の先生達とはこうも違うのかと思える、アストロバイオロジストである。端的に申し上げれば、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で行われている「たんぽぽ計画」の代表者である。だから、本書の主要テーマは同計画の目的と運用のあらましから始まり、火星生命の探査、地球生命の現況、地球生命の起源、地球生命のセントラルドグマ(DNA、RNA、タンパク質の概要)、太陽系内の他の生命、系外惑星に於ける生命と展開される。
無機物(一部有機物を含む)しか対象にしない天文学でも、宇宙はメチャクチャ多様だが、今はその一部でしか無くとも、やがては呆れるほど多様な世界が展開されるであろうことを予期させるアストロバイオロジーの世界を、本書はみなさんの前に提示してくれるのだ。当然近い将来170+頁では済まなくなるこの分野の未来は、とても評者如きの輩には手に負えなくなるだろうが、たった2日で読み切った評者は、7×50の双眼鏡(一応10cm屈折鏡も持っています)の視野内に宇宙生物の居場所を見てしまった気がした。これからは、天文学を語る上で、生物学の勉強も怠らないようにしようと大決心し、それをカルチャーセンターで話題にさせて貰おうと思っている次第。その鍵は、エンケラドス(本書ではエンセラダス)とタイタンにあることを、本書で良く理解することが出来た。