- 集英社インターナショナル
- 17.2×10.8cm、256ページ
- ISBN 978-4797680171
- 価格 821円
著者と評者には妙な縁があり、本書評初期の担当者だったのだ。今やスイス連邦工科大学(確かあのアインシュタインが学んだ大学)チューリッヒ校の研究員、すなわち大学者。評者がお世話になったその人が書いた天文学史、特に星座史や太陽系学が面白い本。と言っても、いわゆる学者の本ではなく、アマチュア天文家の視点も十分に兼ね備えている。例えば、スーパームーンはあんまりスーパーじゃない、月と罰(罪と罰じゃない)、2012年世界滅亡の嘘、チューズデーとマーズの関係、十三星座は必要? 惑星のおかげで恒星に名前が付いた? 通常から異常の天文学、そしてヒンドゥー教と天文学の奇妙な関係、実在しなかった「インドの宇宙観」等々、とてもそこらの天文学書では読めないし、見掛けもしませんよ。
つまり、天文学の大きな楽しみは、学者だけのものではなく、皆さんや評者のようなアマチュアでもどこまでも追求できる分野なのである。ただ、学者の皆さんが活躍する場所は、例えば宇宙年齢を20世紀末には200〜100億年、2003年には137億年±1億年、2015年には138億1000万±4000万年(筆者および評者調査)という具合に誤差をグーンと小さくさせる所にあるのだ。137億年と記された本は明らかに古書です。研究が独創的であると共に、精度を上げ緻密化させる点が、本書を読むと切実に理解できるのである。