- 宝島社
- 18.8×12.8cm、223ページ
- ISBN 978-4800286802
- 価格 1404円
2018年3月14日に亡くなられたため、最近ババッと多数出版されたホーキング関連本の中で、評者が唯一皆さんにお勧めすべきと思ったのが本書である。なぜかというと、哲学や宇宙論に偏らず、物理学者としてのホーキングの人生観や宗教観・宇宙物理学に特化した見方を、東大教養学科と物理学科を卒業なさった(NHKの科学教養番組の案内者としても有名な)著者流の見方で、易しく説明されているからである。具体的には、21歳になって有名な病気に罹り、普通の人なら絶望の底に落ちるはずがそれを逆にバネにして天才研究者となったホーキングが、その後55年もの長い間(しかもその間2度も離婚したという)、誰もが考えつかないことを発表しては否定し、発表しては否定しを繰り返し、第二章で明確にされている人生に対して期待や幻想を抱かないという精神を実践したことを、著者は大変わかりやすく説明してくれているのだ。とくに勉強になるのは、ホーキングが、自分が間違えることをむしろ楽しんでいると説明している本書93ページのくだり。これって凄いことですよ! 性格や経験が全く異なる二人の女性との結婚と離婚を通して、語られている女性観や人生観も、齢(よわい)70を越えた評者には、ズシリと来る話である。また、隠れキリシタンである評者には、ホーキング博士の神観も非常に興味が持たれた。著名な物理学者で無神論者がカトリック教会から歓迎されたなど、実にユニークで、こんなことが書かれた本は他にありません。もちろんブラックホールやマルチバース等も、本書にはしっかり書かれていますよ。