- 地人書館 刊
- 20×13.4cm、288ページ
- ISBN 978-4805209011
- 価格 2,808円
本書はブラックホールについて物理学的に説明する本ではなく、科学史的な流れを解説した本である。訳文もこなれ、読みやすい。よって、文科系の方にも気軽に読んで戴くことができる本。もちろんブラックホールの本質を理解なさっていることに越したことはないが、むしろ現代の科学が最大の問題とするブラックホールの理解が必要とされるに至った経緯については科学史的に理解した方が良く、その意味で本書はみなさんに絶対にお薦めできる本である。こういった歴史的流れについては、我が国でもこれまでに各種ムックなどで、コラムのような場所に簡単に触れられていたが、本書はそれが本格的なのである。
ニュートンは知らぬ人はいないだろうが、時代的にそれに続くミッチェル(ブラックホール予言の原点と言われる人)やラプラス(ブラックホールを隠れた天体と呼んだ)は、ご存じだろうか? マクスウェルやキャベンディッシュは? ブラックホールと言えば一般相対性理論のアインシュタインだが、ブラックホールの創案者はむしろシュヴァルツシルトであり、チャンドラセカールであり、シリウスの伴星などが絡んでいたという。
以前別書で、ブラックホールの命名者が一般にはホイーラーとして知られているが、実は彼が1967年に行った講演会の聴衆提案であるということを読んだことがある。本書によれば、それは1963年のローゼンフェルトの何気ない表現だったそうだ。おもしろいですよ。