- 18 x 13cm、53ページ
- 2008年
- ISBN978-4-8062-0571-5
- 630円
一般書店ではおそらく入手できないレアな本。評者は先頃上野の国立科学博物館で開催された世界天文年2009の企画展見学の際にミュージアムショップで発見・購入した。「はじめに」にあるように、中日新聞と東京新聞に半年間週一回掲載されたコラムを収録したもので、薄い小冊子だが内容は濃い随筆集である。
著者の福井先生にはウン十年も前に山形大学で行われたアルゴル研究会で一度だけ親しくお話しさせていただいただけだが、そのとき並みの学者ではないと直感した。その一つが本書で理解できた。西八郎という有名な画家を叔父様に持たれているのだ。故に本書冒頭を飾る4枚の水彩画に、先生の画才を見た。ラスカンパナス天文台宿舎内など、評者のような凡才でも一見の価値のある絵ばかりだ。
もちろん絵だけでなく、電波望遠鏡「なんてん」の建設経過や、宇宙観、物理教育のあり方、社会観、オペラの楽しみ、落語ファンでドラゴンズファン、従軍看護婦としてご苦労なさったお母様のこと、漢文の素養から調理まで、様々なご側面がうかがいしることができ、評者はひと時を十二分に充実し、読書に浸ることができた。日本の天文学を世界レベルに飛躍させたお一人として、天文学者は人として絶対にこうあるべきだと感じたい人は、ぜひ本書をお読みいただきたい。
一般公募で命名された「なんてん」の命名理由が、(1)南天を見ること(2)難を転ずることというのが面白い。国有財産を当初海外に持つことができなかったことと関係しているようだ。本書にはその経過というか「おち」が書かれている。ソラマメの名前の由来も知ることができます。