- 白揚社 刊
- 19×13.2cm、416ページ
- ISBN 978-4826990585
- 価格 2,808円
評者は、探していた本当の本に出会った。先ず皆さん、本書278〜280頁をお読み戴くと、天文ファンなら誰もが評者の読後感に共感戴けるに違いない。そしてこここそが、本書の本分だということもご理解戴けるだろう。光害が他の科学、例えば生理学(具体的にはガン・精神疾患等)や生物学、環境科学、犯罪科学等にも多大な悪影響を及ぼしていることを記述した個所ももちろんだが、評者は本書各個所を目を皿のようにして、隅々まで食い入った。このため、完読に大層時間(半月強)がかかってしまった。
自宅近くにある大学の学生が、夜中の2時過ぎに無灯火自転車で歩道をぶっ飛ばして走り去るのや、女子学生がスマホ歩きでヨタヨタ歩く様をベランダから見下ろしていると、これ全部街灯のせいだと考え込んでしまう。半世紀前にはなかった光景なのだ。一方、著者が主張されるように、犯罪者は明るいところにいる被害者を好む。何故かというと、暗闇に目が慣れていない被害者には、犯罪者の顔が見えないからである。予想に反して、むしろ真っ暗闇では犯罪が発生しないというわけだ。従って、犯罪防止のために街灯を増やそうという議論は、大きな誤りを犯しているのである。ぜひ様々な立場にいて様々な意見をお持ちの方に、本書をご熟読戴きたい。評者もこれから何度も読み直したいと考えている。
探検家の角幡唯介さんや国際ダークスカイアソシエーション東京支部代表の越智信彰さんらの寄稿エッセイも、実に読み甲斐がありますよ!