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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

天の川銀河の地図をえがく

表紙写真

  • 郷田直輝 著
  • 旬報社
  • 四六判、167ページ
  • ISBN 978-4-8451-1106-0
  • 価格 1,575円

評者は、書店で本書の第三章「宇宙の距離を測る」と第四章「私たちの挑戦−天の川銀河の地図をえがく」を立ち読みして、みなさんに推薦することを決めた。…と書き始めると、安易に聞こえてしまうが、まさしくその通りなのだ。長らくプラネタリウムで星のご案内をしたり、解説員にアドバイスするという仕事に従事したりしてきた評者は、自分なりに基礎天文学を多くの書籍から学んできたつもりなのだが、最近出版された本の中ではなかなか近代位置天文学で良い本にお目にかかることはなかった。

そのため、ヒッパルコス衛星の観測精度や、その後アメリカ海軍天文台の「SIM」やヨーロッパ宇宙機関の「GAIA」など開発中の位置天文衛星の紹介はもちろん、日本のVERA計画やJASMINE衛星などの動きは、いまいち詳細が知れなかった。本書はその部分の記事でピカイチなのである。

本書は、語り口がとても優しく説明もわかりやすく、一見いかにも高校生クラスを対象にした本のように見えるが、どうしてどうして、ハイレベルな天文アマチュアにおすすめできる内容である。それも、派手な宇宙論や、観測マニュアル本だけではなく、(古くからの伝統ある)基礎天文学としての位置天文学の考え方・方針を身につけようと願う方々にこそ読んでほしい本なのだ。

最近の天文書の一部に見られる、いったい誰を目当てに書かれたのかと思ってしまうようなクドクドした本ではなく、寝ころんでも気楽に読める本である。たぶん著者の人柄が文章にそのまま出ているのだろう、本書を読んで位置天文学を志そうとする人々が出てくるに違いない、そう断言できる好書である。

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