- じゃこめてい出版
- 四六判、127ページ
- ISBN 978-4-88043-412-4
- 価格 1,575円
ミリ波天文学の開拓者であり、「天の文学者」でもある前国立天文台長の海部氏が、このたび吟遊された天文学書。本書前書きにあるように、氏は星や惑星の誕生を研究される一方、人間が遠い過去から宇宙に抱いてきた想いを知るために、古今東西の詩歌を中心に人の心を追いかけたそうだ。評者などは、変光星の観測をするだけで手一杯、頭一杯で誠に情けない。
本書に紹介された詩歌の数々は、満天の星以上にきらびやかであり、昔の人々は星に対する関心が低かったなどという俗説がまったく信じられないほどだ。
特に、沖縄に残る「おもろ草子」の歌(現代語訳)が実に感動的だ! 確かに神の世界といっても良い。同じページに掲載された、人工衛星から見た夜の地球の光害あふれる情けない画像を見て、昔の真暗な世界にあこがれてしまうほどだ。登場する詩歌は万葉の時代の持統天皇から始まって、建礼門院右京太夫、藤原定家、能因法師、源実朝、与謝野晶子、星の俳人山口誓子と、留まるところを知らない。李白の漢文などお手のもの。
深い天文学的洞察に基づき、文学をお語りになるその跡を、気軽にゆっくりと辿りたい方には、ぜひ本書のご購入とご研究をおすすめしたい。